犬小屋の思い出

うちの愛犬は17年とちょっとの寿命を全うしてこの世を去った。かれこれ10年以上も前の話。なぜか犬小屋はいまも実家の玄関脇に鎮座している。うちの犬小屋は手作りだった。途中まで父が作った。しかし元来が不器用なため、*1祖母が続きを引き受けた。祖母いわく「もともと先祖は宮大工だった」とか。たしかに祖母の手つきはそこらの「おばあちゃん」じゃなかった。てきぱきとした手つきで夕方には小屋らしいものができた。そのそばで口は出すが手を出さずに見ていた父はおもしろくなさそうだった。幼心にも父の子どもじみた態度は「うぜぇ」と思ったものだが、そこは祖母のほうがうわ手で、最後の仕上げを父に託した。今思えば祖母の対応はオトナよのぅ。父が託されたのは、犬小屋の出入り口を作るというものだった。正直、今までの経緯を見ていて「無理だろう」と思ったが、口にせずじっと見ていた。左半円まではうまく行った。が、残りの右半分は見事にぎざぎざした半円(?)のようになり、正面から見るとかまぼこの右上に誰かの歯型でもついたかのようになってしまっていた。あーぁ、と落胆したのだが、本人はいたって得意気だった。子ども心にも水を差すのはよそうと思ったことを覚えている

*1:母方の