食うか食われるか

夕方外出した。そこに通じる轍でもあるかのように、するするとクレープ屋に向かい小腹を埋める。今日は職人肌の女子2人組はおらずイケメン店員ともう1人新顔の女子がいた。焼きの係は新顔女子だった。長い髪の毛は結ばずに無造作にたらし、小銭をもらった手でそのまま消毒もせずにクレープを紙に包む。体の重心を左側に傾かせてかっこつけて焼いているので、トッピングの量が過剰で激甘だった。致命的なことにクレープに穴まであいている。ちぇ。ちょっと舌打ち。仕事は丁寧に。人のフリみて我がフリ直そうと思った。ひとまず机の上は清潔にしておこうと心のすみっこにメモ。
買い物をすませていつもの喫茶店でお茶をしているとホッとしたせいか、人の往来を眺めていると催眠術にでもかかったように眠たくなってくる。その後、書店をぷらつきなんとなく気分が重たくなってニンニクのきいたものが食べたくなった。よし! 今日は餃子だ。安易といえば安易な選択だけどまえから気になっていた餃子の店に行くことにした。さまざまな種類の餃子があるが、もう冒険するお年頃でもないのでオーソドックスなラインでチョイス。基本の餃子の具は八角が隠し味のスパイスになっている。わりと満足。一緒に頼んだシソとたまごの炒飯がこれまたイケている逸品だった。なるほどシソはこう使うのかと家で再現するイメージを頭に叩き込む。料理はどれもニンニクの大きなカケラが目に見えるほど入っていたので、きっと明日は相当なニンニク臭を発するにちがいない。まあ、それもヨシ。週明けだし人は近付けずにひとり景気づけていこうかと。
帰り道、カエルの姿の小銭入れを店先で見つけた。たぶんあれは本物のカエルだと思う。昔、小学校の通学路でカエルが車に轢かれてぺらぺらののしイカのようになっている姿と初夏の雨上がりで蒸すなか、潰れたカエルの腐敗臭がたまらんかった。そのときの目と鼻の記憶がカエルを受け付けなくしている。カエルの小銭入れは当時ペシャンコになっていたカエルと同じくらいの大きさで生々しい目はどこから見ても目があってしまう。大いに気のせいなんだけど。怖い怖いカエル怖い。やはり同じように恐れているハトと比べるとハトのほうが怖い。でもどうしても周波数のあわない弊社のT岡さんと比べるとハトよりイヤだ。怖いとか恐れているわりにハトもカエルも食べられるからマシだ。むしろ食いたいと思う。T岡さんは別段関わりがなければスルーできる。うーん、食えないやつはもしかしてわたしか……