ブックフェアを懐かしく思ふ--その1

パスタはゆでかげんですよ

今年もフランクフルトブックフェアの時期がやってまいりました。その前にロンドンブックフェアがあるのだけど、友人が旅立っていったので、ああ、まためぐる〜めぐる季節のなかで〜♪ と妙にポエムな気分。年に4回大きなブックフェアがあり*1、版権担当をしていたときは年に2度、アメリカとフランクフルトに行っていた。ずいぶんご無沙汰しているのだが、たぶんもう行くことはないだろうと思うので回顧録などを……。
初めてのブックフェアは、かれこれもう10年ほど前かしら。ロス暴動の2年ほど後。もちろん、当初はどんなイベントかも知らず、前情報もなく、とにかくロスに行けといわれて、どう考えても滞在時間のほうが短くねぇ? という2泊3日のすさまじい旅程だった。到着初日にハウスキーピングが部屋をノックする正午すぎまで寝腐り、アポにも思いっきり遅刻してひんしゅくモノだったが、20代前半の小娘がイベント会場を歩いていることこそ当時はまれで*2たとえ遅刻しても「まあしょうがないわね」と笑って許してもらった。たしか、そのとき著者に会ったのだと思う。PC書の有名なその著者は、明るく出迎えてくれて、なぜか記念写真まで撮った。
そしてその夜、某版元のおばさまと会食をしたのだけど、当時バブル期だった版権業界にふさわしい超有名ホテルに宿泊されていて、「ホテルのおフランス料理を予約したからわたくしのお部屋にいらっしゃい」と呼びつけられた。ホテルの部屋をノックすると、そこには夜会にでも出かけようという勢いのロングドレスを着た女史が待ちうけていて、ひとまず仕事の打ち合わせだけ先に済ませてしまいましょう、お楽しみはそのあとでね♪(事実♪はついていた)というノリだったので、少しひるんだ。打ち合わせを終えてディナーが始まると、酒豪と噂されていた女史の酒の進むピッチははやく、緊張の面持ちのわたしも、フルコースの半ばでワインが3本目に入ったときすっかり酔っ払いだった。そしてだんだんいい感じになってきていた女史が、おもむろに身の上話を始めた。おそらく女史はわたしのひとまわり以上の年頃で、リアルにも熟した肉が身についていて、わたしよりひとまわり大きかった。女史のフルコースが終わってもバーに移動して深夜まで続いた明るい身の上話は、結局のところ「自由な恋愛を謳歌するわたし」ってイケてると思わない? というものだったと記憶している。ある種の「自由な恋愛」という意味合いをしみじみと考えるきっかけになった。
ホテルの部屋へどう帰ってきたのか不明のまま、きちんとシャワーも浴びて寝て、翌朝の朝食ミーティングにもきっちり間に合う自分をほめてあげたかった。われながら辟易するほどの毛穴中からもれる酒臭さをどうにかしようと、オレンジジュースをしこたま飲んだような。ごくりごくり、と。その日の午後便でへろへろになりながら帰路に着いたのだけど、結局このときの目的はブックフェアに会おうと思っている人が集結しているから、会いに行くというようなものだったんだな。そして、最初で最後のブックフェアだと思っていたのに、数奇な運命にもてあそばれて、その後も参加することになるとは思わざりけり。しかし、なんでこんなヘビーな旅程になったかというと、帰国して翌日が入稿だったからですね。しかも、そのタイトルは……あああああああああ、、、、記憶が飛んでしまった。怖くて思い出すことを拒否してます

*1:アメリカブックフェア、ボローニャブックフェア、ロンドンブックフェア、フランクフルトブックフェア

*2:本来ブックフェアは版元のエライおっさんが来てタイトルの青田買いをする場だったので