引越しという名の夢

広い一軒家が破格で貸し出し中ということで冷やかし半分で見に行くことになった。2階建てのその家は静かな住宅街に立地していて、広い庭には縁側もある。古い家にありがちな懸念の水まわりも申し分なくて、内見をすませたころには引越ししたい衝動に駆られていた。案内してくれた不動産屋がこちらの心を見透かすように「体験学習があるように、最近は一晩お泊まりいただいて決めてもらうコースをご用意してるんですよ。一軒家をお借りになるのに夜は物騒なんじゃないかと思われるお客さまもいますから」と云う。寝具と簡単な台所用品は揃っていて、お風呂もぜひ入ってみてほしい。タオルもお貸ししますよ、と気前がいい。おぉ、それはいい。早速その晩試してみることになった。夜も更けて、布団に入ると干したばかりの日向の匂いがして、至れり尽くせりだなと感心しながら寝入る。深夜、人の気配に目覚めるとわたしの顔を覗き込む子どもと目があった。ひぃぃい〜〜、座敷童子だ〜〜、というところで目が覚めた。すべて夢です